ノンフィクションはドキドキするね「黒い看護婦」(森功)「子供を殺してくださいという親たち」(押川剛)「ケモノの城」(誉田哲也)
怖い物みたさっていう面で一番怖いのはノンフィクションだと思います。
なにー、こんなこと実際にあるんだって思うとそれだけでもやもやもやもや。ああ僕はまだ「まし」な世の中にいるなぁと思ったりして。
ノンフィクションというと新潮文庫の独壇場。正直どれ読んでもハズレなしですねえ。なんだこの事件、なんだこのケース読むたびに心臓の鼓動が速くなります。危険危険危険の二乗。
というわけでこんなの読んでますよ。
『黒い看護婦』森功
福岡であった看護婦四人組の保険金連続殺人。主犯の吉田純子はついこの間死刑も執行されているので覚えている人もいるんでないかな。たしか大竹しのぶ主演で映画にもなったはず。
もうこの吉田の非道っぷりが怖い。でこの手の人ってほんとマインドコントロールが上手なんだよね。自分と仲良しの看護婦を誘導して旦那さんを殺させちゃうんだから。しかしその誘導に簡単に乗って旦那を殺す人も人なんだけどさ。でも術に嵌ってしまうのかなぁともおもうんだよね。それくらい「悪気」がないのが怖いんだよ。
まあ事件内容はwikiでも出ているんでこちらをどうぞ。
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人間ってのは簡単に人殺してしまうんだなぁ。読むとしばらく人間不信になる一冊。
そしてこれも読んだ。
『「子供を殺してください」という親たち』押川剛
これも題名だけでセンセーショナル。家庭内暴力でいつ親をころしてもおかしくない子供たち(といってもほとんどが20過ぎよ)を保護する精神障害サービスの実態。読んで驚いたのは今日本の殺人事件の半数以上が被疑者と被害者の関係が「親族」だという事実。うんそれだけでも十分怖い。
作者は中立の立場から行政の不備、親の不徳、子供の怠惰さなどを追及する。圧倒的なのは前半に書かれたケース集。これ読むとわかるんだけど親に暴力をふるう子供って子供のころは所謂「いい子」が多いのよ。しかし受験で挫折、就職で挫折、あるいは恋愛で挫折したときその鬱屈がくべて親に発散される。本のなかにも出てくる子供も大学出(あるいは中退)が多い。そして親も「いままで良い子だった」からどうしていいかわからなくなる。子供は酒に溺れたり麻薬中毒になったりネットばかりして部屋から出なくなる。そして親がそれに対し何かいうと暴力をふるう。
他人事でないな。
作者は警察だけが対応するのでは無理があると断言する。なぜなら警察は何か「事件」が起きないと動けないから。その前に動いたら虞犯になってしまう。でもそれは最終段階じゃない。だからこそ行政や医療機関はもっと早く動かなければいけないという。これには納得なのよね。もっと周りが気にしないといけないのではないのかな。
そして最期はこれ。
『ケモノの城』誉田哲也
これはノンフィクションというよりは実際にあった事件を舞台に書いたミステリだけどね。
舞台になった事件はあの「消された一家」で有名な北九州連続監禁殺人事件。僕は「消された一家」を読んでいたのでストーリーのあらましは知っているけどそれでも「酷い」。
これ誉田のストロベリーナイトなんか目じゃないくらい残虐描写酷いんじゃないかしらん。読んでも胸糞悪くなって本を閉じる人多いのではと心配してしまう。
そしてそこに誉田のストーリーテリングの上手さ。引き込まれて一気読み。最後のミステリ的なオチも見事でこれはありだなぁ。まあ最後まで読むとますます靄靄感が強くなるんだけどね。ミステリ者には是非読んでみてほしい一冊である(でもそれで気分悪くなっても知らないから)
どれを読んでも実際に起きていること。事実というフィルターが胸を辛くさせる。あのね、人間というのは思っているよりも「ひどい」のよ。だからこそひどくならないようにいろんなストッパーが必要なんだよな。