ひどい本三連発「クリスマス・テロル」(佐藤友哉)「殺人鬼教室BAD」(倉阪鬼一郎)「墜落遺体」(飯塚訓)
ここんとこ酷い本ばかり読んでいる。
まあ酷い本を読むのは今に始まったものではないけれどさ。
まず佐藤友哉
『クリスマス・テロル』
自殺志願者の少女が島に流されてそこで男に助けられる。男は27歳。そして島には記憶を無くしてしまうもうひとりの少女、更にはその少女をかいがいしく世話する祖母がいる。
いやここまでは酷くない。というか有川や加納あたりが書きそうなハートウォーミングな予感をさせる本である。
でもね、佐藤はそんなにいいやつじゃないぞ(いままで読んでいるので知っている)。
佐藤は僕らの気持ち悪さを増幅させるのが得意な作家だ。それは「フリッカー式」や「デンデラ」ですでに知っているはず。でもねえ・・・・
ここからネタばれ。
まず記憶を無くしてしまう少女は男に惚れている。でも男は祖母とつながっているのだ(恋愛というにはあまりに年が離れている)。そして少女はそれを見てしまい(性交場面ね)・・・・
ってそこでこの展開を書くか、佐藤。読んだときもういやーな気持ちでいっぱいである。よく真梨が嫌ミスの女王と言われるけど、真梨はまだマシなのだよ。だってイヤなのが範疇内なんだもん。でも佐藤のはその範疇を越えた「イヤーな感じ」を見せるから困ったものなのだ。たぶん読んだ人のほとんどが不愉快になる、そんな本である。
クリスマス・テロル invisible×inventor (講談社ノベルス)
- 作者: 佐藤友哉
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2002/08/06
- メディア: 新書
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でこっちは大仕掛け。
『殺人鬼教室BAD』倉阪鬼一郎
これはほぼコント。だけど死ぬ死ぬ人が死ぬで困ってしまう作品だ。
時は近未来。そこでは従来の道徳は唾棄すべきものになり、世界は殺人と性欲にまみれるようになった(なんかエロゲみたいだな)。
登場人物は次々と性交を繰り返し、更にはその相手を殺す。学校での授業は殺人と性交に特化し、死ぬことも快楽の一つと教えられる。
だからこそ死ぬことも全員厭わず、進んで前近代の拷問を受け、苦しみながら恍惚の表情で死ぬ。
しかしその世界には実は秘密があった。その秘密とは・・・・
ぶっちぎりでアホ作品だけどとにかくこんなこと良く思いつくよ、あいたたたって感じだ。読んでいる人とはまず友達にならないほうがいいレベルの作品である。しかもラストはTHE中2。なんだこれは。でもこの勢いに僕はとりあえず白旗でした。
と酷い作品が続いたがでも一番ひどく辛いのはこれかもしれない。
『墜落遺体』飯塚訓
おぼえているだろうか、あの日航機事故を。520人が死んだあの事故だ。この本は当時警察官だった著者が丹念に遺体を集め、追悼を重ねたノンフィクションである。
まず事故現場の悲惨さがもはや言い表せないレベル。腸が出る、首が取れているなどは当たり前。また夏なので蛆が死体にたかるのだ。著者は翌日から米の飯が食べられなくなったという。白米が全部、蛆に見えてしまうのだ。
それでも遺族のため、死者のため、死体を集め、丁寧に復元しようとする気持ちに胸が打たれる。首だけしかみつからない子供の遺体を抱いて「すまんなぁ、体見つけられなくて」という警察官に誰が文句を言えようか。
この本は酷い本であるがそれでも僕は良書だと思う。読んでみてほしい。事故をしっかりと見せようとし、二度と起こらないようにしてほしいという著者の気持ちがぐいぐい伝わる。
そしていつの世でも現場で働く誠実な人と何もしないで口だけは出す不誠実な人がいる現実にガッカリする。恥ずかしくないのかな、そういう人は。いや恥ずかしいなんて思うんならそんなこと言わないよねとふと思って自戒自戒。そんな人間にだけはならないようにしよう。
あまりにひどい本ばかり読んだのだが酷い本は僕らの裏側を移す鏡かもと思っている。だからといって友成純一、アヤツジ、式貴士あたりばかり読んでいると人間性を疑われるのでそろそろハートフルを読もう。加納朋子あたりがいいのではないかい。
といいつつ今、飴村が読みたかったするんだよ。