関西弁の楽しさ「疫病神」(黒川博行)
やっぱもやもやしたときにはピカレスクやね。
黒川博行『疫病神』
いやぁ読むべき読むべきだったねえ。
あのね、これでもかなピカレスクロマン。主人公は建設コンサルタントの二宮とヤクザの桑原。この二人が産廃場もをめぐる取引に巻き込まれて……
いいなぁ。まず桑原の飄々としたヤクザ像がいい。僕は基本、ピカレスクに弱いんだけど(花村萬月、馳星周、大沢在昌、北方謙三など)、今回の桑原のそのどれとも違う飄々とした感じ。金に汚く仁義もへったくれもない。それでもたまにちょっとだけ優しい(これは最後読めばわかるのよ)キャラクターってのはちょっと読むと好きになってしまうレベル。
そしてコンサルタントの二宮が巻き込まれ、ダイハード状態。ぼろぼろになりながらも最後まで自分を捨てない姿。すっきやなぁ。これぞピカレスクだよ。
でてくる会話も大阪弁なのがいい。これ大阪の地理に詳しい人はもっと面白いんだろうなぁと思った。僕はそこまで知らないので残念だ。
久々にピカレスク読んだんでここで他にもこんないい作品あるぞ紹介。こんなピカレスクはほんと面白いんですよってピカレスク・ベスト。
花村萬月『二進法の犬』『笑う山崎』『狼の領分』
やっぱピカレスクなら花村に痺れる。僕は山崎が大好きなんだけど、今回は序列一位に「二進法の犬」を持ってきた。この本の手本引きギャンブルシーンはほんと痺れる。
馳星周『不夜城』『『雪月夜』『漂流街』『虚ろの王』
中国系チンピラを書かせたらもう馳にはかなわないんだよなぁ。僕は大好き。でも北海道の寒さを書いた「雪月夜」なんかも好きだったりする。
浅田次郎『プリズンホテル』『きんぴか』
飄々としたものを書かせたら浅田だね。なんか読んでいてほっこりするのも好き。どうも最近、歴史物に行ってしまっているけど浅田の基本はヤクザなんだよね。
大沢在昌『新宿鮫』『毒猿』『らんぼう』
大沢と言ったら新宿鮫。でも「らんぼう」も面白いんだよねえ。僕は結構こっちが好き。新宿鮫シリーズいつのまにか読まなくなってしまったよ。
北方謙三『友よ、静かに瞑れ』『渇きの街』
北方というと文体がって言う文句もあるけど(僕も不満だ)、でもいいんだよなぁ。格好いいってこういうことだよ。僕は結構若さ溢れる「渇きの街」が好き。
桐野夏生『OUT』『天使に見捨てられた夜』
女性のピカレスクなら桐野だろう。格好いいんだよねえ。ミロシリーズも好きだけどなんたってOUTが好き。これは読んだときは血が滾ったなぁ。
小川勝己『葬列』
ちょっとグロでも大丈夫なら小川推奨。まあこの人はもともとミステリ畑だからピカレスクでないものもあるんだけどこの「葬列」は凄まじい。最後のちょっとしたミステリ展開も好き。
・・・・あ!しまった、大藪春彦を忘れていた!そして西村寿行も!