本と珍スポと教育と

本について語ります。珍スポットについて語ります。あとたまに教育について語ります。ゆるゆるとお読みください。

みすてりーらんど「野球の国のアリス」(北村薫)

世の中には羊頭狗肉という良い言葉がある。

見た目は良いが中身空っぽという意味です。別名、板野知美とも言う。あるいは角川映画とも言う。あるいはチャーリーシーンとも言う(すべて悪口です、念の為)。さらには平成帝京大学とも言う(念の為もう一度言うが悪口です)。



これ本の世界でもあるあるなんだよなぁ。

まあ国書刊行会の本はみんなこれでしょ。もう装丁ばかり凝りに凝って必ず1冊2000円以上ぼったくり、どこの馬の骨ともわからんC級思想家の本をほら凄いでしょと売り出し、出したら5000部返本の嵐初版絶版当たり前田のクラッカー。留めてくれるなおっかさん背中の牡丹が泣いてるぜ(橋本治)ってな感じ。

でこのシリーズもそう感じていた。

講談社ミステリーランド

まず箱入りである。
そして各ページにこれでもかの挿絵
さらに本はビニールコーティング
ページの角もかわいくカット

金かけたでしょ、講談社

 


執筆陣も豪華だ。今一番油ののっているミステリ作家たちの夢の饗宴。子供たちにミステリの楽しさを。綾辻行人有栖川有栖歌野晶午小野不由美山口雅也島田荘司、法月倫太郎・・・ 新本格を知っているものなら涎だらだらのラインナップ。

でもねえ・・・今のところ2冊読んだんだけど(小野不由美「くらのかみ」歌野晶午「魔王城殺人事件」)ダメ。ダメダメダメダメダメダメダーーーーーーーーーーーー。いや小野不由美歌野晶午も好きな作家なので痛かった。お前ら子供舐めすぎだろ。こんなこと書けばことども喜ぶんじゃないの子供はこんなの読んでいればいいんだよ、ほらほらほらーーー。

もうこのシリーズ読むのやめようかしらん・・・

そう思って読んだこの本

『野球の国のアリス』北村薫

いい!

これいい!


やるじゃん北村。こんな本書くなんて。まあ北村はもともと高校教師だからかもしれないけど「児童文学」の素養があるんじゃないのと嬉しく思っちゃう(そういえば北村の書いた「月の砂漠をさばさばと」はとっても素敵な絵本だった)。北村はさりげなく子供に「いろんなこと」を考えさせるのね。そこがほんと素敵なんだよなぁ。

野球少女、アリスが主人公。彼女はある日、鏡の中に入ってしまう。その中ではほとんど同じ世界だけど、負けた方が注目されるという「さかさま」の世界が繰り広げられていた。


その中で懸命に生きるアリス、彼女を自然に応援してしまう。この主人公を応援する雰囲気にさせることこそまさに児童文学の真骨頂。そうこなくっちゃ(前2作にはそれが欠けている)。児童文学だからこそ感情移入させる装置が必要だということを北村は分かっているんだよね。

「現代のほうが大人が甘くなっている。子供が考える前に感じる前に答えを差し出そうとする」そう物語で語る北村の視線は教師のそれだ。だからこの本は自分で答えをだそうとするアリスを応援してしまう。

僕はこの本が好きだ。これくらいのレベルで児童書を出すならこのシリーズは応援したくなるなぁ(ちなみに今作はミステリではないです。念のため)。


というわけでミステリーランドは購入を控えていたが(1冊の値段も高いしね)また買おうと思ってます。これ文庫でもアヤツジの「びっくり館」や麻耶の「神様ゲーム」は出ているんだけど、やっぱりこの装丁で読みたいねえ・・・



つまりロクは見た目ですっかり騙されるタイプだということです。
 

 

くらのかみ (ミステリーランド)

くらのかみ (ミステリーランド)

 
野球の国のアリス (ミステリーランド)

野球の国のアリス (ミステリーランド)