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本と珍スポと教育と

本について語ります。珍スポットについて語ります。あとたまに教育について語ります。ゆるゆるとお読みください。

優しいホラー「草祭」(恒川光太郎)

本を讀んだよ た行

僕はホラーが好きです(まあ今更言うまでもないけど)。

小説は言うに及ばず、映画なんかも大好き。だいたい中学生のころ初めて一人で見に行った最初の映画は「エルム街の悪夢」だからね。ホラー歴30年以上です。年期入ってますよ。

でもね

ホラーと一言でいってもなかなかこれがどうして「いろんなホラー」がある訳よ。僕が好きなのは比較的身も蓋もないホラー。心霊現象とかではなくとにかく肉斬りぎったんばっこんな感じの作品が好き。映画ならベタに「13日の金曜日」、「エルム街の悪夢」「スクリーム」。そうそう「CUBE」なんかもデスゲームとして大好き。小説ならなんだかんだでもJ・ケッチャムと友成純一。あとはアヤツジの殺人鬼なんかも好きですねえ。一言でいえば「血ドバ」ですがな。

でもそんなホラーじゃないホラーもあるよね。まあお前はホラーではなくてスプラッタだろって言われれば、ええ、ええそうですバケラッタなんだけどね。

という訳でこんなホラーもありますがな。

『草祭』恒川光太郎

優しいよ!優しいよ!恒川。

たしかに心霊現象であったりちょっと怖い話があったりはするんだけど主眼はそこではないんだよなぁ。これ5つの短編なんだけど(注:微妙につながっているのはポイント)そこに流れるのは本当の「モラル」なんではないのかなと思う。たぶん恒川は生きる/死ぬを通じて僕らの存在とはなんなのかって問いかけている気がするんだよね。

そしてそこに通じる目は(生半可でなく)優しい。あのね、優しさってのは相手を存在として認めてあげることなんだとふと思う訳。

どの短編も好きだけど一番は「くさのゆめものがたり」。この再生譚に痺れてしまった。生きることも死ぬこともそんなに変わりはない。そんな死ぬことの関しての恒川の「優しさ」に癒される。しかもそれを民話のテイストで書いてくるから堪らない。まあ読んでない人もいるので敢えて物語の説明はしないけど、柳田の遠野物語を読むような懐の広さに感服したよ。これベストだなぁ。

かと思うとさりげなく現代の人物も出してきて(「屋根猩々」「天化の宿」)しっかりと小説として機能しているのも上手い。ここは異論もあるかもしれないが単なる雰囲気の物語にせずにしっかりと「我々」とリンクさせ、尚且つ決してゲスでない作品を書きあげる力量はなかなかだよ。やるな恒川。一言でいえば上品

ただあまりに上品すぎてややパワー不足の感は否めない。そこは恒川を読んでいつも不満に思うところ(これ三崎亜紀でも思うんだけど)。どうも若い作家さんって「無茶」しない気がするんだよなぁ。見事にしっかりまとめてくれる。だから読んでいて瑕疵はないんだけど・・・・でもね、僕は瑕疵だらけでも無茶苦茶な作家が好きなんですよ(これ、完璧に個人としての意見)。だからこんなしっかりした作品を読んだらそのあとは展開もロジックも無茶苦茶な友成純一とか宇能鴻一郎なんかを読みたくなってしまうんだ。アホやな、自分。

まあでも満足です。美味しく戴きました。





そうそう、以前退院したときこんなことがありました。僕の携帯に履歴のない電話がかかってきて、とったらば一言






「ずるいよ」





誰なんでしょう。いまだにわかりません。

 

草祭 (新潮文庫)

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