今ならすぐたたかれそう「文士と姦通」(川西政明)
僕はサークルでの恋愛と職場内の恋愛が苦手です。
あれ、困りません?ああ、この人前付き合っていたのに別れたんだ。どうしよう。どう接したらいいだろう。いやこっちは呼んでこっちは呼ばない・・・いやそれも変だし。っていうか前は違う人と付き合っていたよね。あれこんどは。いやいや・・・・
困る。
まあそのままうまくいくカップル(付き合う→結婚)という流れならいいんだけどそうとも限らないからねえ。よしんば結婚しても離婚なんて流れも。いや自分が気にしすぎかなぁと思うんだけどどうも困ってしまうんですよね。
これどうも男性のが気にするのかなぁ。そんなことないか・・・どうなんでしょ。僕はどうもダメなんすよね。今まででも職場の同僚とそんなことになったことはないし。なりそうでも徹底して拒否してしまう。うーむ、どうもそのあとの面倒のが先にきてしまうのかも。恋愛は感情の爆発だと言われますけど、僕はどうもその後の面倒なこともついつい考えてしまい、損得勘定で考えてしまうんだよね。
つまらない男ですよ。
しかし世の中にはそんな損得勘定なんか考えず自由に恋愛をするツワモノがいっぱいいるわけで・・・
『文士と姦通』川西政明
いやーひどい(褒めている)。
文士の先生は夜もお盛んだった。しかもこれあり?ってレベルでお盛ん。それをぐいぐいと切り込んでいく気鋭の評論(ってかノンフィクションかな)。
俎上にあげられる文士は北原白秋、芥川龍之介、谷崎潤一郎、宇野浩二、宇野千代、岡本かの子、佐田稲子、有島武郎、志賀直哉、島崎藤村、夏目漱石。
ここで太宰治と中原中也が出ないのが不思議。
北原白秋は夫のある女性と付き合い、しかも姦通罪で訴えられる。いやー、ぶれてない。そしてそんな内緒の付き合いなのにその女性のことをぐいぐいと詩にして書いてしまう白秋。あのね、これ今ならツイッターに「○○と今日はホテルで待ち合わせ」って書いてしまうようなものよ。脇が甘すぎるよ、白秋。
その時の詩がこれ。
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白い月がでた、ソフィー
出て御覧、ソフィー
勿忘草のような
あれ、あの青い空に、ソフィー
どうしてあんなに泣いたの、ソフィー
細かな雨までがまた
新内のように聞こえる、ソフィー
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ださ!
なんだこれ。ああ、もう恋は盲目だよ。ほんと盆暗である。白秋の不幸は死んだ後でもこんな阿呆な詩を読まれてしまうことだと思う。
芥川はその点、そんなに恋に執着してない。まあ若いころはそれでも遊んだのだけど、其のあとは何をやってもむなしいばかり。それが自殺の原因なのかなと思うとふとさびしくなる。
芥川で笑ったのはこの箇所(笑ってはいけないけど)。「龍之介は巨根の持ち主であった。友人はあれではかなうまいと嘆息したのだ」オイオイ。そんな個人的なことまで書かれてしまう芥川って。当時はモテモテだったんだろうね。巨根でハンサムだもの。でも龍之介はそんなものに群がる女に嫌気がさし自死してしまう。諸行無常だぜ。
変態と言えば谷崎である。まず谷崎は自分の妻千代の妹、せい子が好きになる。その時せい子は若干14歳。はいロリコン確定。でせい子と付き合うためには千代邪魔じゃーん。だから友人の佐藤春夫に押し付けるのね。これが有名な嫁交換事件。でもせい子は谷崎好きでないのよ。まあだいたい著者近景みても小太りだしね。「背が低く、小太りな潤一郎はもともとせい子の理想の男性像ではなかった」。フラれっぷりもいい感じだ、谷崎。
その後、佐藤春夫とうまくいっている千代をみた谷崎は千代と別れたことが惜しくなり、「あれは俺の女だ」と言い出す。ハイ、DQN確定。もう~。ちなみに谷崎はこのネタで「痴人の愛」を書くわけ。転んでも唯で起きないぞ。
島崎藤村は自分の姪に手を付ける。しかも処女。やってまったー。またロリコン確定である(ロリコン多いな)。しかも最低なことに藤村はそのことの処理を全くせず自分はフランスに逃げるのだ。あとは任せたお兄ちゃん。つまり手をつけた姪の父である兄に全部任せてフランスはパリへ。兄ちゃん困っただろうなぁ。
でパリから帰って反省すると思いきや、またその姪とやってしまうのだよ。藤村、お前反省はしないのか。で散々付き合って結局金の力で別れるようになる(当時藤村は文壇の地位を確定していた)。いや、全然感情移入できないんですけど。というかむしろ気持ち悪い。
それに比べると佐田稲子や岡本かの子、宇野千代は自由でいいなぁ。ある種のビッチなんだけ実にのびのびしている。ちなみに佐田稲子と宇野千代は当時とんでもなく「美人」だった(写真も載っているけどいい女だよ)。岡本かの子はそうでもないけどね。
とうわけで文豪のとんでもなくフシダラな面を見ることのできるこの本、おすすめです。ただし最後の夏目だけは牽強付会すぎます。夏目、意外と常識人だったんだろうなぁ。
こんどは太宰治、田山花袋、坂口安吾、中原中也、石川啄木あたりのフシダラな面を読みたい。2冊目希望ですぜ、川西先生。