本と珍スポと教育と

本について語ります。珍スポットについて語ります。あとたまに教育について語ります。ゆるゆるとお読みください。

狡いなぁ「赤い夢の迷宮」(勇嶺薫)

ええっとですねえ、

例えば普段ガングロ、化粧も決めてばっちりメイク。しかもスマホはデコレーション。話す言葉も語尾があがる感じ。でもなぜかテストは高得点。学年のトップクラス。実はいつもさりげなく勉強は一日3時間はやっている。

ずりい・・・

あるいは普段はそんなそぶりかけらも見せないで仕事はばっちり、テキパキテキパキ。きている服もバリッとしたスーツを着こなし、ヒールの歩く音だけがカッカッカッと鳴り響く。でもひとたびベットでは恥ずかしそうに「あかん」となぜか関西弁。「いやそこはあかんって」そんな事言われたらついていくしかありませんがな。

ずりい・・・

いやいや、普段は単純な好々爺でいつもニコニコ公園で笑っているのにある日、公園にダメなDQNが来たら「こらこら、そんなことはしてはいけないよ」。「うるせー黙っていろジジイ!」そこに突然黒服マッチョが三名ほどあらわれいきなりそのDQNに殴りかかる。「組長、大丈夫ですか」「組長はよしてくれ。もう引退した身じゃないか」




ギャップ萌えです。



で今日はこの作者


勇嶺薫



誰のことかわかりますか・・・・?ミステリファンでもなかなかわからないかも。


実はこれ、こう読みます。

「はやみね かおる」

そう、あのジュブナイルミステリの帝王です。もともとは平仮名表記が基本。でも今作だけは漢字表記で名前が書かれている。

『赤い夢の迷宮』

館です。殺人です。クローズドサークルです。

あの「誰も殺さない」「優しくて優しくて優しい」「子供に読ませたいミステリ」のNO1はやみねかおるが満を持して書いたブラックなミステリ。

25年前に子供だった7人がそのとき知り合った年寄りに30を超えた今、招待される。子供のころは夢や希望にあふれていた彼らは現実を知り、そして閉塞感に苦しみ「館」に集まってきた。

ってこれ、藤子不二雄の「劇画おばQ」やん!ああ、悲しい。ああ苦しい。しかも作者ははやみねなんでそこらへんは容赦ない。子供のころあんなに純真だったのにいつのまにかみんな「変わって」しまったんだ。

で、当然、殺人は起きる訳ですよ。一人、また一人ってね。ここらへんはクリスティやアヤツジ同様、実に正統派。

で、一応結末が出るんだけど・・・・





ここからはネタバレあり。読んでない人、御躊躇を。











 


どわわわわ。これアンチミステリじゃん。結局殺人は起きたの?起きてないの?夢の中なの?現在なの?なんと最後の最後にはやみねは大どんでんで今までの記載を「無かったこと」にしてしまったんだよ。なんだこれー。全ては終わると夢の中。押井守の「ビューティフルドリーマー」か!なんとも言えない結論にもやもやもやもや。いやこんなのはやみねは書いては駄目でしょ。いたいけな青少年を暗黒に突き落とす作品ですよ。いや吃驚。はやみね、こんなのも書けるんだねえ。

ただミステリ部分は少し甘いんで評価はうーん、星三つかなぁ。でもこんな作品にチャレンジをしたはやみねに僕は改めてすげええええってなりましたよ。








あ、狡い作品大歓迎です。あ、狡い人も大歓迎です。

普段は厳しい言葉しか言わないのにベッドでは急にしおらしくなる人なんか大好きです。

世はそれをツンデレという。

 

赤い夢の迷宮 (講談社文庫)

赤い夢の迷宮 (講談社文庫)