本と珍スポと教育と

本について語ります。珍スポットについて語ります。あとたまに教育について語ります。ゆるゆるとお読みください。

少女小説にしてミステリー「ルピナス探偵団の当惑」(津原泰水)

そりゃ津原ですがな。

というわけで津原ですよ、津原。なに知らない?まあじゃんほうろうきか?それはサイバラ。こんなものくえーん!それは海原。ジャニーズ辞めた・・・。それは君はバラバラハートは赤いバラ・・・

・・・生まれてすいません。

津原です。泰水です。

まあ僕はもともと津原がすきなんですけど、なかなか世間には浸透しておらず、一部熱狂的なファンがいるって状態。まあ寡作な人だからね、それもむべなるかな。もともと津原は少女小説出身なんだけど(講談社X文庫だぜ)、そっからとんでもない物をあれやこれやで書き散らしさらには幻想小説作家として確固たる地位を築いたという、そりゃないぜマルガリータな作家だ。

僕としては幻想な津原がすきなんだけど(蘆屋家の崩壊、奇譚集なんかね。11もいいなぁ)、こんな正統派ミステリもありありあり。

ルピナス探偵団の当惑』津原泰水

うわ、正統派ですよ。ミステリですよ。萌ですよ。

少女が三人。行動的なボーイッシュな美少女、おっとりしている正統派美少女、とりあえず美少女(主人公)に謎な少年(化石好き)。この4人が推理するミステリ短編。

まあもともと講談社X文庫で発売されたからかな、とーっても読みやすい。あれれ津原やればできるじゃーん

そしてミステリがどれも正統派なのがよい。謎こそ貧弱だけどロジックの追い求めはソリッドだ。きっちりきっちり整理して追いかけるので「ああ久々にこれは正当派」って思ってしまう。

そして出てくる人物がなんともかわいらしい。これは萌える。萌えつきてしまう。僕はとくに正統派美少女の京野に萌え。この美少女、推理もろくにせず、死体を見るとすぐに吐く。まるで谷崎の細雪を読んでいるかのようだ。くけけけけけ。

津原らしさもそこかしこ。とくに3作目「大女優の右手」ではオチにモヤモヤな展開を持ってくる。このアンチなところが津原ですね。満足である。

敢えて不満を言えばこんだけかわいらしい小説なのにもかかわらず、創元の表紙がどうにも禍々しいところ。装丁は北見隆。この人ちょくちょく講談社や創元で表紙書いているんだけど(赤川や恩田あたりの表紙も書いていなかったっけ)どうも好きになれない。全然可愛くないんだよなぁ。


ちなみにこの本は元が少女小説だけあって少女も読みやすくなってます。そして気にいって幻想ラインの津原を読むとそりゃーって罠。この罠を仕掛ける作家として津原以外に中村うさぎ森奈津子あたりもあげられる。気をつけなはれや!

 

ルピナス探偵団の当惑 (創元推理文庫)

ルピナス探偵団の当惑 (創元推理文庫)