読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

本と珍スポと教育と

本について語ります。珍スポットについて語ります。あとたまに教育について語ります。ゆるゆるとお読みください。

子ども向けでも悪意健在「いつか、ふたりは二匹」西澤保彦

なんだかんだで西澤の上手さが際立っているのですよ。

あ、西澤保彦ね。僕は結構(というかかなり)好きな作家さん。でもミステリリーグの人でないとあまり知られていない作家さんでもある。

西澤というと「七回死んだ男」や「チョーモンインシリーズ」のようにSFとミステリの融合が有名だが「漁死の果て」や「黄金色の祈り」のように陰陰滅滅としたミステリでも有名。そういえばタックシリーズもさりげなく暗いよなぁ。僕は根っこが山崎ハコなんでこんなミステリは好きだったりします。

で、そんな西澤が子供のためにかいたミステリがこちら。

『いつか、ふたりは二匹』西澤保彦

おなじみミステリーランドである。そう、講談社が大金をだして子供たちのための本を新本格作家にかかせたというアレ。箱入りのアレだ。装丁があまりに凝りすぎてどうなの?って思うんだけど。でも僕は好きで(決して文庫では買わないんだから!)、懲りもせずに単行本を購入している。これ全部揃ったら楽しいだろうなぁ。

そうそう、本作本作。

まず主人公が少年(ミステリランドだものね)。で主人公が猫に眠っている間は乗り移れるという人格転移もの。猫の名前はジェニイでこれはポール=ギャリコの同名小説のオマージュでもある(ちなみにギャリコはちくま文庫で「猫語の教科書」を出している。これ面白いんですよ。猫好き必読)。まあ西澤で人格転移ものと言えばあの名作「人格転移の殺人」があるけれど今作でもその流れは絶好調で展開する。

そしてその主人公である少年=猫は一匹のセントバーナードとだけ話しが通じ合う(これテレパシーか?)という設定。西澤の読み方のコツは設定をすんなり受け入れるところにある。

そしてそんな状況の中、一人の女の子が暴漢に襲われ重体になる・・・。

あのね、西澤が「黄金色の祈り」なんかで見せる「悪意」がこの本でも書かれる。ええ、書いていいの?と思いながらそれもアリだなぁとしみじみ感じているんですよ。なるほど、こうきたか。

そして最期近くに謎の解明。ハイ、ミステリ作家だよね。展開の流れはそのまま西澤節。嬉しくなってしまう。

そしてもう一つの謎もラストに解明されるんです。多少のネタバレですけどだからこそ「ふたりは二匹」なんだよなぁ。僕はこれに関しては推理あたり。久々にミステリで推理あたりでばんばんざーいである。

全体てとしては権力あるものに対する嫌悪(西澤作品ではよくある)も自分勝手な生き物である人間(これも西澤作品ではよくある)も描かれていて満足。あと事態がすっきりしないというのが西澤の悪癖だけど(「猟死の果て」や「収穫祭」を読むべし)これもしっかりと継承。満足・・・なのか?

満足です、ええ。




定価が2000円だとか中身が薄いとか講談社はこのシリーズをなぜ出したかとかいろいろな意見もございますけど、もう少し僕は温かい目でこの「ミステリーランド」を追っかけてみようかと思ったりしています。

定価が2000円だけどね!(くどい)

 

いつか、ふたりは二匹 (講談社文庫)

いつか、ふたりは二匹 (講談社文庫)