怖い話もいい話しも「1950年のバックトス」(北村薫)
一度だけやってみたいことがあるのだが。
場所がなるべく周りに人家のないところがいいだろう。周囲が暗いのもポイント。街灯はついてないに限る。
でまず、家の灯は全て消す。この場合、ブレーカーを落としてしまうのもあり。
でやはりローソクがいいねえ。集まるのは5人ほどの男女がいい。こういうのはなるべく語りの上手なのに限る。
携帯の電源も切るべきだ。灯はローソク以外はついていてはならない。ローソクは本来百本だろうが、この場合、20本ぐらいあれば十分でないかなと思う(十本でもいいかな)。
そして後は定番。一つずつ話が終わるたびにローソクを消せばいいだけ。この場合はとびっきりの怖い話はいらない。ちょっと「ん?」と思うよな話しでもいいと思う。
百物語ですよ。
やってみたいなぁ。自分は一度でいいからしてみたいんだけど。自分、結構怖い話もってますよ。「病院の老婆の話し」「夏に追っかけてくる少年」「東京湾観音のトンネル」「ファミレスで人数を必ず間違えられる」「死ぬ直前だけ元気になったおじ」・・・
どうです、やってみませんか。
今日の本はちょっと怖い話もあるこれ。
『1950年のバックトス』北村薫
「酒も恋も冒険もすべては本の中にある」
全部で23編の物語からなるショートショート。今まで書いてきたのを一冊の本にまとめたので面白いのあり、ミステリあり、ちょっとほろっと来るものあり、なんだかわからないものあり。
ショートショートの都合上、実に玉石混合。なんだこれーって話しもある一方で実に心をぐいっとわしづかみにされる話しもあり。僕の中では7:3くらいでこれは有りだなぁと思ったりして。
実は百物語はこの本の冒頭にかかれる話しなのよね。これが実に有りでこわかった。僕は読んでぐぐぐと引き込まれたよ。
ハートウォーミングでは(北村の得意技)野球を書いた表題作、「1950年のバックトス」やまだまだ生きているだけで楽しい「ほたてすてーきと鰻」が好き。北村は実にさらっと「くる」本を書くなぁと思う。
ところで
どうもこの本に収録されている「昔町」は藤子不二雄の「やすらぎの館」のパクリでないかと思うんだけどどうだろうか。まあたまたまテーマが重なってしまったのかもしれないけどどうにもイヤーな感じになってしまった。北村先生、これは書いてはいけなかったんじゃないの?
まあそれ以外は実に満足なショートショートでございました。北村、短編うまいなぁ。これは以前「月に眠る」でも思ったことだったりして。
最近不思議だったこと。
電車の中で女子高生が話している。「最近カラーコンタクトにしたらなんかいろいろ見えるようになったんだよねえ」
問題はその女子高生の周りに誰もいないということなんだよ。