別れても好きな人「おかしな二人」(井上夢人)
んなわけない。
というか別れたのはなんだかんだの須田町で結局
「意見があわなかった」からではないかいと思ってしまいます。そんなこと考えていたらこんな本を読んでどわわわわ、すげえ、ここまで書いていいのって思う本読んじゃったよ。
『おかしな二人』井上夢人
これは凄い。
岡嶋二人という作家を知っているだろうか。1980年代に活躍した軽妙な展開と誘拐ネタを得意にしたミステリ作家である。
代表作は「チョコレートゲーム」「99%の誘拐」「焦茶色のパステル」。
実はこの作家、コンビであり徳山諄一と井上夢人の二人が作品を書いていたのだ。
そういえばコンビ作家って少ないよな。漫画だと藤子不二雄をはじめゆでたまごなんかもいるけど。海外だったらエラリークイーンぐらいしか思いつかない。
おっと脱線脱線。
で、その二人がコンビを組んでからコンビを解消するまでの、顛末が井上側から実に詳細に書かれているのが本書である。
もともと、二人の役割は井上が文章を書き、徳山がプロットをたてるというものだった。岡嶋得意な競馬、ボクシング、野球などのネタは徳山の功績によるところが多い。
その一方で圧倒的なリーダビリティや軽妙さを作ったのは井上の文体の功績だと思う。まさに二人は「二人で一人」。この本でも前半ではそんな二人が力を出し合って本を作る。なんとも微笑ましくなってしまう。
しかし、この本のクライマックスはそこではない。後半にあるのだ。徐々に二人の歯車はかみ合わなくなっていき、井上は徳山に不満を持つようになる。
これすごいのは井上は徳山宛てにかいた私信(パソコン通信なのだが)が恨みつらみ不満だらけなんだよ。徳山よく耐えていたなぁ。この本は井上が書いたので徳山の意見はあまり表に出ないが徳山は徳山で不満たっぷりあったのではないかと思う。
岡嶋の本をそこそこ読んでいる僕からすると徳山なくして岡嶋は成立しなかったとおもう。なぜなら彼らのメインが競馬でありボクシングであり徳山の十八番の内容なのだから。なのに井上は「書いているのは僕なのだから」とばかり徳山を一方的に詰るのだ。おいおい、そこまで言ってしまっていいのかって読んでいる僕がハラハラする。
そして最期は井上が切れてしまいゲームセット。徳山はあと一作でもというが井上は「もう終わりなんだ」と言い放つ。
これまさに恋愛が壊れるときと同じでないかい?
共作の難しさ、ともにやっていくことの大変さを感じさせ、さらにはここまで書いてしまっていいのかというくらいアケスケなこの本。岡嶋二人が好きなら二人の最後はこうなったんだと哀悼の意も込めてこの本を読むことをおすすめ。ただし岡嶋作品をあまり読んでない人には薦められないかも。というのも話しの展開上、何作かのトリックについて言及しているので。ある程度読んだ方に読むことをおすすめします。
藤子不二雄もきっとこんなことが二人の間でもあったんだろうなぁ。ただあまり言わないだけでさ・・・。なんで年取ってから藤子・F・不二雄と藤子不二雄Ⓐって言いだしたかはかなり気になるところだよねとふと思ったりして。