本と珍スポと教育と

本について語ります。珍スポットについて語ります。あとたまに教育について語ります。ゆるゆるとお読みください。

中学生に読ませたい!「王妃の帰還」(柚木麻子)

いろいろと困難を乗り越えるからこそ子供は成長するんです。

と言うのが僕の感想。

あまり親や周りの大人がレールを引いてあげると良くないかなと。それよりは困難を失敗してもいいから「自分」で立ち向かうといいのかなと思います。大人はあくまで「ほんとに困った時に」だけ助けてあげる。夜警国家論ではないけどそのほうがいいと思うんですよ。

まあ子供を育てたことはないけどいつも子供たちを教える生活をしてますんで。



今回はとっても清々しい「子供たち」の話し。

『王妃の帰還』柚木麻子

舞台は私立の女子中学。スクールカースト激しいグループ戦争のなか、クラスのトップに君臨していた滝沢さんが大貧民よろしく、陥落する。そんな滝沢さんを受け入れるのは主人公範子を含めた4人の地味なグループ。彼女たちは滝沢さんの復活を画策する。

とにかく出てくる子たちの書き方が生き生きとしているのがいい。どの子も読んでいるだけで顔が思いつくような感じ。ああ、いたいたこんな子。そんな「今そこにいる」子供たちを柚木は実にあっけらかんと描くのだ。

そしてどんな子にもそれぞれ悩みがある。しかしそれを解決するのは先生でも、ましてや家族でもない。解決するのは「自分自身」。ジャンヌダルクドンキホーテか。それでも彼女たちは自分たちの困難に向かって果敢に立ち上がるのだ。

そして読んでいる僕たちも「あのころ」を思いだす。たしかにクラスに「王女」(あるいは王子)はひとりだった。でもでも王女になれなくても、僕は(あるいは私は)そこにいるのだ。そして自分が主人公なんだ。そんな思いを思い出させてくれる。

最後の幸福感は只者ではない。読み終わって「ああ、いい小説だった!」ってニコリと本を閉じることができる、そんな小説。ど直球でど真ん中で狙ってくるも思い切って振り回し、空振り三振、でもにっこにこにこーな小説。あああああ、良かった。僕はこれがすっきやねん。 

 

王妃の帰還 (実業之日本社文庫)

王妃の帰還 (実業之日本社文庫)