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本と珍スポと教育と

本について語ります。珍スポットについて語ります。あとたまに教育について語ります。ゆるゆるとお読みください。

ミステリマニア「耳をふさいで夜を走る」(石持浅海)

本を讀んだよ あ行

マニアは奥が深いんです。

例えば鉄道マニアだと電車見てはふーと言っているような状況をイメージするかもしれませんが、実態は多ジャンル。乗り鉄は乗るのが好き、撮り鉄は写真を撮るためのマニアであまり列車に乗らない、時刻表鉄はとにかく常日頃から時刻表を見てるだけ、模型鉄はどっちかというとジオラママニア、その他、昔の鉄道遺産を歩く考古学鉄、駅にしか興味のない駅鉄(自分これだなぁ)、音源ばかり集める音鉄・・・まあたんなる鉄道でよくもこれだけあるものだよ。

ミステリマニアもそうです。

ミステリというと世間で流布しているイメージでは警察官が出てきて犯罪を追いかける・・・、あるいは名探偵がでてきて容疑者を並べて滔々と推理を述べる・・・・そんな感じですよね。

でも実際にはミステリとかいっても多ジャンルなんですよ(多様化社会)。上記にあげたのは現在のミステリのほんと一部分しかすぎません。

 

僕はとんでもないロジックで読んでいてくらくらする設定のミステリが好きだったりします。

とんでもないロジックなミステリ作家というとこんな感じかしらん。

西澤保彦・・・ミステリにSFを絡めさらにはそのSFの状況がすべてミステリの論理を支配する。アチャラカパズラーの異名は伊達ではない。

折原一・・・どこまでも叙述トリックに拘ったミステリ界の求道者。もはや折原=叙述と言われる所以。癖があるんでほんと一般読者にはお勧めできないがミステリを読みこなしてきた読者にはこの人しかいない。

山口雅也・・・なぜ殺したか・・・ホワイダニットの第一人者。殺人理由はとんでもないものばかりであるがどれをとっても「納得」してしまうのが山口マジック。独特な世界観で読むものを虜にする。

法月倫太郎・・・ロジックを立てては崩しまたたてて。ミステリ界の賽の河原石積み地獄。「誰彼」なんかその極北。全てのロジックは蓋然性によって成り立っている。

麻耶雄嵩・・・ミステリ界の飛び道具。「麻耶だから仕方ない」「麻耶だから勘弁しよう」そんな言葉が囁かれる作家。もう読んでなんだよこの展開はって思って麻耶だもんなぁ。

三津田信三・・・ミステリとホラーの融合と言ったらこの人。独特のホラーを体現させながらも最後にはするっとミステリに戻る奇跡。そしてすべてをロジックで語ったあとに出てきたのは「非論理」の世界。

そしてこんな作家さんもいます。

石持浅海・・・捩れた論理を書かせたら天才。論理のスタートは間違っているのにいつの間にかそれを追いつけることで「正しい」論理になってしまうMr.パラドックス。あれれ、おかしいと思っているのにいつの間にやらおかしくない。

これは有りなんです。

『耳をふさいで夜を走る』石持浅海

石持がまたやってくれたな!(ダチョウ倶楽部)。

倒叙なのにスピード感でぐいぐい読ませられ何何何何~ってなる出来。僕はこれは好きな作品なんですよ。

一晩に殺人事件が6件。しかも主人公はある理由のために殺人をし続ける(まあその理由はこの作品の肝ね)。この理由がほんと意味不明なんだけど最後にはなるほどって思ってしまう不思議。稀代の詭弁的作品ではないのかい。

石持ならではの捩れた論理なんだけど、そこは力技で不思議と違和感ない。石持はこのような作品が多く、最初は納得いかないのに最後になると納得してしまう自分がいるのね。

さらにサスペンスとしても見事に読ませる本になっている。僕はひきこまれたなぁ。決して一般的な作品ではないし一部の好事者にしかこのまれない作家なんだけど僕はとっても満足。それって自分も好事者だってことを表明しているってことかしらん。



他にも妙なラインで作品を書くミステリ作家としては黒田研二小川勝己倉知淳、倉阪 鬼一郎あたりがいるかなぁ。僕はこのラインはどれも好きなんですよ。

まあ普通の作品ではイケない痴れ者なんで・・・・

 

 

耳をふさいで夜を走る (徳間文庫)

耳をふさいで夜を走る (徳間文庫)