女性作家と男性作家「憧憬☆カトマンズ」(宮木あや子)
二分法は結構穿ったときもあるんだけど・・・
男性作家は左脳で、女性作家は右脳な感じがしませんか?
例えばミステリでいうところの圧倒的なパズラーは男性作家が多い。女性作家と言われると海外ならクリスティがいるけど日本はちょっと思いつかない。現在活躍しているミステリ作家でもパズラーと言われる女性作家って少ないんじゃないですか。
でも、その一方で一般小説における女性作家の進出は枚挙に暇がない気もするんだよね。というか今、一般小説って女性作家のが多いんじゃないの。小川洋子、西加奈子、江國香織、梨木香歩、川上弘美、平安寿子、角田光代、有川浩、桜庭一樹、三浦しをん・・・
うん、正直、所謂「小説」というもの(昭和でいえば中間小説ってやつ)は今や女性作家のが強い気がするんだけど。このメンバーに対抗できる現役男性作家って荻原浩、奥田英朗、山本幸久くらいしか今はいないんじゃないかな。
男性作家は「ジャンル分け」ができるものでは強いんだけど(特にミステリ、ホラー、SF)、ジャンルの分けられないものだと女性作家のが分があると思うのは僕だけではないのではないかと思う。結局、ジャンルを設定しそこに忠実に反映させるのが男性作家だとしたら、まず書くことから初めてそっから「物語」を紡ぎだすのが女性作家なんじゃないの。 本を右脳で読むのか左脳で読むのかってことで男性作家が好きか女性作家が好きか変わるのではないかなぁと妄想してみる。
ちなみにこの論拠を浅田彰に言わせれば男性はパラノイアで女性はスキゾフレニーな分類になるのかもしれない。たしかに自分はパラノイアの傾向があるなぁ。コレクターって男性が多いのも事実だし。
宮木あや子『憧憬★カトマンズ』
やっぱり宮木はB面がいい。
もうすぐ30歳のOL二人。どこまでも前のめりな二人に共感してしまう。宮木がノリノリで書いたイケイケな小説ですよ(死語)。
やっぱり宮木はアケスケな感じで書かせると上手い。そしてアケスケ、下品に書いていてもどこかセンスがいいのが宮木の良さ。この本でもそのセンスが光る。それは音楽の趣味でもそうだし、洋服でもそう。つまりは野暮ったくないんだよね。ああこの人は洗練されているビッチなんだなと思う。
野良女とか好きなら絶対おすすめ。実際野良女で出てくる鑓水は出てくるんだけどね(カメオ出演)。宮木のしっとりな感じが好きな人はどうかなとも思うんだけど(僕はどっちも好き)、こんなぐいぐいくる小説が僕は好きだ。ウルトラハッピーはここにある。宮木の良さって「背筋を伸ばして起立している」良さなんだよなぁ。
僕はセンス抜群でしかも美人なのに掘立小屋のようなところに住んで趣味は仏像を彫ることという中尾が可愛くてしかたなかった。宮木、いい感じで女子をつくる。アリだね。
多少ご都合主義な事件が起きるんだけど、普通の小説では「ご都合主義」だろって気になって鼻白むのにこの小説ではあまり気にならない。それはこの小説がリアリティがないことを逆にリアリティにしているからかもしれない。つくりのもの楽しさを宮木は確信しているのではないだろうか。変にこれこそリアルだと訴える説教臭い小説よりも「どうせ小説じゃん、へへん」と笑いながら書いてくる宮木のしたたかさに膝をうつ。
「野良女」「セレモニー黒真珠」「憧憬★カトマンズ」僕はこの3つが大好きである。なかなかここまでぐいぐいとかける作家はいないんじゃないの。なんか宮木が他の作家の作品に向かって「けッ、カマトトぶりやがって」と笑っているような感じさえするんだけどな。そんなところも込みで好き。もっといっちゃってくれよ、宮木さん。