本と珍スポと教育と

本について語ります。珍スポットについて語ります。あとたまに教育について語ります。ゆるゆるとお読みください。

これは笑ってしまった「カエルの楽園」百田尚樹

これは奇書だわ。

カエルの楽園百田尚樹

いや笑った笑った。いろんなとこでツッコミどこ満載なんだけど何がいいって百田がこれでもかこれでもかと私憤満載で書いているのがいい。現代の警鐘とか未来の予言とか右とか左とかどうでもいいんだけどまずこの話が「結構面白い」ことに僕は評価してしまう。

あ、もともと筒井好きだけあって私憤満載の小説は大好きなんですよ、あらかじめ。

舞台は蛙の国。自分たちの国が他の蛙に侵略されてロベルトとソクラテス(主人公)はほうほうの体で新たな新天地を探す。

そして見つけた国こそがナパージュだった。周りを崖に囲まれ他国からの侵略にあいにくい国。これもちろん日本をモチーフにしているのね。そもそもJAPANの逆読みだしね。

そこでは三戒の教えと言うのがあり(カエルを信じろ、カエルと争うな、争うための力を持つな)これによって平和な国になると国民が信じている。これ、三戒なんかはそのまま9条のこと。

ナパージュにはいろんなカエルがいる。

頭良く、いろいろと国民にアジテーションをするデイブレイク→これ朝日新聞なんかのことかな
三戒を取り払い武装すべきというプロメテウス→安部首相か
武力的に強くナパージュを守ろうとするカエル、ハンニバル三兄弟→これ自衛隊かな
すぐ平和を説こうとする老人政治家ガルディアン→民主党かしら
デイブレイクの腰ギンチャクであり平和ばかりを叫ぶがいざとなったら腰抜けフラワーズ→SEALDSかな
そして三戒を守ろうとするヒロイン、ローラ→これはモデルはないかも
事態を自嘲気味に見守るカエル、ハンドレッド→百田本人だよ。苦笑。

さらにナパージュを守るものとしてスチームボートという大鷲がいる→これはアメリカね

で、まあデイブレイクとかフラワーズなんかがほんとお花畑に描かれるの。作者は「公平に書いた」って言うけど、嘘でしょ。お前私憤満々じゃん。じゃなかったらここまで厭なキャラに書かないよ。それだけでゲラゲラ。

でそんな国に隣沼(隣国ならぬ)からウシガエルが侵攻してくる。これ韓国や朝鮮のことだろうね。これ韓国人読んだらどう思うのよ。だいたいウシガエルっていかにもイメージ悪すぎだろ。

ハンニバルはそのウシガエルたちを撃退しようとするんだけど、三戒の教えを破ったとしてデイブレイクに殺されてしまう。

デイブレイクはウシガエルとも話せばわかるというのだけど、話しても分からず、ナパージュはウシガエルたちの大殺戮にあって国も滅亡してしまう・・・





感想


ご都合主義すぎてもう笑いしかでない。まず三戒の教えを守ったら確実に攻め入られるよ、ナパージュ・・・ってそんなに国際法適当かよ。さらに三戒は守る、でもアメリカはいらないというデイブレイクの論理に頭ふわふわですがな。それで国民は納得するのって思うんだけどこの本の中では納得してしまうんだよなぁ。流石奇書。

僕はお花畑な左翼を好きでない、左翼なんだけど、いくらなんでもこれは中学生の妄想だろ。でも中学生の妄想だからこそ面白いんだよなぁ。百田が俺の言うことを信じないとこうなってしまうんだぞ我が国はという電波がぐいぐい出ている本です。それだけでも読む価値あり。

まあもともとストーリーテリングに関しては技術のある作家なんで読ませるんだよなぁ。そこも凄い。技術の凄いマッドライター(マッドサイエンティストみたいなもんだな)が書いた「迷作」だと思う。いや笑った笑った。って笑ってはいけないか。

ただ少し不満も。どうせぐいぐいやるならやっぱりもっと大殺戮すべきじゃん。稀代の私憤作家、筒井は「大いなる助走」や「朝のガスパール」でそこまでやっているぞ。それに比べるとちょいおとなしい。たぶん百田は真面目なんだろうな。だから「ドタバタ」よりも「メッセージ」を伝えたかったのだと思う。

ちょい怖いのはこれ読んで純真真っ直ぐクンは「そうだ戦争に行こう」となってしまうことで。普段、小説なんか読まない人がこれ読むのは怖いなぁ。判断基準わかってないんじゃないのって思う。


左翼のなんでもかんでも戦争反対にもうんざりだけど右翼の「左翼は全て間違っている」もうんざりなんだよな。もっと中庸って考え方はできないのかね。

小説としては読ませるよ。ほんと奇書です。落ちがもっと凄かったら完璧なんだけどなぁ(いろんな意味で)。






しかし帯に「百田尚樹の最高傑作」と書いてあるけど、これだけでも結構電波出すぎだよな、百田先生。『永遠の0』や『海賊と呼ばれた男』はそこそこいい作品だっただけにこの変りようは複雑ではあります。あのね、影山民雄が幸福の科学に入ってしまったころのフクザツさと似ているんだよね、いろいろとさ。

 

カエルの楽園

カエルの楽園