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本と珍スポと教育と

本について語ります。珍スポットについて語ります。あとたまに教育について語ります。ゆるゆるとお読みください。

これは奇書だわ「語り手の事情」(酒見賢一)

この本凄いんだけどあまりみなさん読んでくれないなぁって本は有りませんか。

いや凄いんだよとにかく惹きこまれるんだよもうくらくらするんだよそのままくけけけけけって成るんだよって感じなのに周りにはまず人気のない本。

ましてや作者を言っても誰それうめえのか(悟空)みたいな感じでケンもホロロ、黙殺されてしまうことってありませんかって話しです。




あるでしょーーーー。

例えば

高橋源一郎の「成功と恋愛にまつわるいくつかの物語」
小林恭二の「ゼウスガーデン衰亡史」
花村萬月の「笑う山崎」
筒井康隆の「虚構船団」
牧野修の「黒娘ーアウトサイダーフィメール」

こんな小説がそれかなと思っているんです。

そしてその小説に共通しているのは「磁場」なんです。とにかく「磁場」が強い。ひきこまれたら最後、そこから抜け出せないような「磁場」。それは世界観だったり異形なロジックだったりとさまざまなんですが僕はそこに吸い込まれてしまうんです。

ジャンルも何もない、なんていっていいかわからない、こちらに安寧を齎さず、逆に奇妙な動悸を引き起こす小説、予定調和なんかウンコ喰らいなさいな感じの小説。僕はそんな小説が大好きだったりするんです。

そしてこれも凄かった。



『語り手の事情』酒見賢一

これは性愛小説です。
これは恋愛小説です。
これはメタフィクションです。

これは「小説」です。

ふっとんだ。こんな形で酒見は書けるんだねえ。そもそもデビュー作「後宮小説」を読んだときこれは只者でないと思ったし、その後、「陋巷に在り」でもこの才能は凄いと感じ行ったがやはり只者で無かったのね。

舞台は19世紀イギリス。主人と三人のメイド、さらに「語り手」の5人。まあ淫靡な感じがビンビンしますよね。「城の中のイギリス人」や「0嬢の物語」の様な背徳感。まあそんな舞台の中で主人公たちは「性」に関していろいろと「俯瞰」で語り、そして行うのだよ(ナニをね)。

ただこれはそこらのフランス書院小説とは違うんだ。性は俯瞰で語られそろって「対象化」される。そこにあるのは性の情報と粉々にされた断片だけ。僕らはフランス書院のようにそこに自らを投影することは出来なくなる。主人公の「語り手」と同じく俯瞰で、そして経験者としてでなく観察者として見ることしかできなくなる(これはある種のSMなのかな)。

ここまでなら単なるメタフィクション。でもこの作品はそんな観察者の僕たちが最後には観察者という鎧をかなぐり捨てて作品の中に入ってしまうのだ。ここが凄い。主人公である「語り手」は「語り手」でなくなり「主人公」になる。一方で僕らも「観察者」は「観察者」でなくなり体験する。この凄まじいグルーブこそこの本の要である。

最後の章では不覚にも感動が止まらなかった。ジャンルとしてはこの小説をナニといっていいか良くわからんのだが(敢えて言えば恋愛小説で有ろう)、読み手を惹きつけて離さない「磁場」がこの小説にはあるんだよ。参った。こんなのがあるんだから読書はやめられないよってなるんだよね。






上記にあげた5冊(今のこの作品も含めると6冊)、全部読んでいる方がいたら今すぐ僕の体もナニもすべて差し上げます。というか一冊でも読んでいる方がいたらそりゃー嬉しいよって話しです。ほとんど読んでいる方って見たことないんだよね、これがまた・・・・・

 

 

語り手の事情

語り手の事情