もやしもんだけではないぞ「人斬り竜馬」(石川雅之)
まず突き放し方が尋常でない。
いや、漫画ってのは起承転結があって(というのをフクちゃんで教わったが)最後にがしっかりとオチがあると。
でもこれは違うんだよねえ。まず竜馬が「悪役」なのがいい。そして竜馬の理屈、佐幕派の理屈、新撰組の理屈、それぞれが「しっかりとした理屈」なのがいい。僕らはついつい何が悪者で何がそんな単純ではないんだよ。そしてこの作品は最後まで
「単純ではない」
と語って終わる。そこに痺れた。すげえなぁ。
全部で4つの短編漫画集だが十分、池波なんかの題材と並べても遜色ない。いやこれは、池波というより山本周五郎かなと読んで思った(まあ周五郎のが先だけどさ)。
それぐらいの「深み」がこのマンガにはあるんだよなぁ。僕は以前、石川雅之のほかの短編を読んだときにもぐいっと魅かれたが(コメディも上手いがなんてったってペーソスがあるほうが上手)この作品もそだったよ。