本と珍スポと教育と

本について語ります。珍スポットについて語ります。あとたまに教育について語ります。ゆるゆるとお読みください。

本を讀んだよ

過去との対峙「人質の朗読会」(小川洋子)

こんなのあるんだから本を讀むのはやめられないんだよねえ。 『人質の朗読会』小川洋子 うわわわわ。やられた。ああ、やられた。いや、やられた。 この本の凄いところって僕らは何のために本を読んでいるかってことなんだと思うんだよね。 いや 「自分のため…

歌手なのがもったいないくらい「アントキノイノチ」さだまさし

題名はふざけているのに涙止まらないよ。 『アントキノイノチ』さだまさし しかし、これなんか読むとほんとさだは歌手でなく小説家なのではないかと思っちゃう。天は二物を与えるよ、まったく。才能ってすごいね。 主人公は人が死んだあとにその部屋を掃除す…

イギリスの変人は凄い「解剖医ジョン・ハンターの数奇な生涯」(ウェンディ・ムーア)

ジョン・ハンターなる人物を知っているだろうか。 ドリトル先生のモデルになった人で有りながらジキルとハイドのモデルにもなった、18世紀イギリスに現れたブラックジャック、それがジョン・ハンターである。『解剖医、ジョン・ハンターの数奇な生涯』ウェ…

ミーハーでもいいじゃない「落語娘」(永田俊也)

教条主義者だったと思う。 学生の頃、蓮實重彦の「物語批判論序説」を読んだ。それは今あることに目を向けろ、そこに付随する口当たりの良い「物語」に騙されるなということだったと思う。 例えば映画を見る。その場合、僕らはつい付随している「芸能人の知…

キッツイ本だなぁ「ぬるい毒」(本谷有希子)

時に嘲笑は罵倒よりも堪えるものである。 『ぬるい毒』本谷有希子 あああああああああああ、嫌だ嫌だ。 いるんだよ、他者を知らず知らずに嘲笑するやつ。しかも嘲笑って言葉があっているんだよね。ほんとあざけ笑う。そんないやーな男とその男の磁力に取り憑…

文体で笑え「へらへらぼっちゃん」(町田康)

トイレに行って用をたすときは危険が一杯なわけで、まずは最初便座に座るときに、ああひょっとしたら便座は高熱で温められていて火傷をしてしまうのではないか、いやいやあるいは物凄い低温で座った途端心臓麻痺、すわ危険じゃないかあわわわわ、坐ってまず…

やっぱ山風だよ「海鳴り忍法帳」(山田風太郎)

というわけで山風。僕は山風だけでごはん三杯いけてしまうほど山風好きなんですが(注:山田風太郎のことですね)、みなさんいかがですか。 ええ、読んだことない?そうでしょうねえ。 ええ、売ってない?そうでしょうねえ。 ええ、誰だ?そうでしょうねえ。…

数学は面白い「浜村渚の計算ノート 3さつめ」(青柳碧人)「ウケる数学」(名取亮)

皆さんの嫌いな数学の話し(一部好きかも)。 うーん、これくらい好き嫌いが分かれる科目ってないのかもしれないなぁ。苦手な子はほんと嫌いだし。自分も今、個別で教えているんですけど(数学は大っ嫌い)、ほんと目が死んでいるんだよなぁ。まず考えようと…

洋服好きなんです「服が掟だ!」(石川三千花)

洋服好きです。 もう、ほんと馬鹿につける薬はないくらい「服バカ」なんですよ。一部屋は洋服だけの部屋にしてあるんだけど、どうにもそれでは入らない感じ。ええ、どうしましょう。というわけで今年は少しばかり服を買うのを控えようかと思ってます(どうせ…

2060年くらいにはできるかも「妙なる技の乙女たち」(小川一水)

SF好きなのに「火星の人」を読んでいないで時代に乗り遅れた男です。 ところで男性ってなんで宇宙好きなんでしょうかねえ(女性も?)。あれですか。未知の物を開拓していく楽しさでしょうか。たしかに僕も「2001年宇宙の旅」も大好きだし(もう2016…

リズムで読もう「古事記」(池澤夏樹訳)

僕は翻訳物が苦手である。 いや海外にもいい作品がある。それは当たり前で、たぶん確率論的には海外のがいいものは多いだろう。その点で翻訳物を読まないというのはほんとは勿体ない話しである。 でもねえ。 どうも苦手なんだよ。読んでいても文章がまだるっ…

ゆるやかな日記がたまらない「東京日記 卵一個ぶんのお祝い」(川上弘美)

九月某日 晴 電車の中で謎の会話。 「覚せい剤ってのはそんなに悪いものなのかね」 「そりゃー悪いよ、法律で禁止されているし」 「でもさ、誰が酷い目になるってわけでもないし」 「それを言ったら売春だってそうじゃないか。あっちは気持ち良くなるんだぜ…

年とっても元気いっぱい「こぐこぐ自転車」(伊藤礼)

「いい年なんだから」 この言葉でちょっと損している気がしませんか。 なんか年とるとあれやったら恥ずかしい、これやっちゃいけないってなるんだけど、ホントはそんなの関係ないんじゃないのとも最近思うんですよ。 逆に何歳でも好きなことやっていられる人…

中学生に読ませたい!「王妃の帰還」(柚木麻子)

いろいろと困難を乗り越えるからこそ子供は成長するんです。 と言うのが僕の感想。 あまり親や周りの大人がレールを引いてあげると良くないかなと。それよりは困難を失敗してもいいから「自分」で立ち向かうといいのかなと思います。大人はあくまで「ほんと…

パニックになる「滅びの笛」(西村寿行)

最近地震が凄い。 この間も生徒を教えていたらゴゴゴゴゴ。なんだこれーって思っているとだだだだ。すわ、天変地異か。 ああこのまま地震が起きて全ての建物が倒壊するのか 地割れが起きてそこにはまり込んでしまうのか 動物たちは狂気をなしてその波に飲み…

ドイツミステリを讀んでみる「コリーニ事件」(フェルディナント・フォン・シーラッハ)

ドイツミステリというものがある。半可通(あまり知らないくせに)の僕があえてドイツミステリの特徴を言えば 夾雑物がない なんてことが言えるのかなと思う。犯罪に対し、ストレートに受け入れる。それ以外の「装飾物」を伴わない。あくまでも「事件」だけ…

ミステリ好きだけがこのむ本「十三回忌」(小島正樹)

本格ミステリ好きに贈る。 まあ、僕の親しい本好きの方でも「本格ミステリ」好きってのはほんと少ない。もともと少ないパイだから当たり前なんだけどね。 海外ミステリ好きの方はけっこう多いし「ミステリ」好きの方も多い。 でも 本格ミステリ好きは少ない…

東京エレジー「東京人のしきたり」(大野益弘)「終点のあの子」(柚木麻子)

東京っていっても西東京と東東京はけっこう違うような気がする。 僕は生まれも育ちも東東京(しかも浅草は吉原という見事な環境の悪さ)。ここらへんは所謂「東京人」ってよりは「江戸っ子」なラインではないかと思っている。 ちなみに江戸っ子の認定は 三代…

古典的二次創作「たけくらべ」(樋口一葉 川上未映子訳)

『たけくらべ』樋口一葉 川上未映子訳 悪くない、のである。 もともと僕はうねうねする文体に弱い。うねうね文を読むとなんだかあやしゅうこそものぐるほしき気がしてああ、これはいいなあ、読む麻薬だなぁ、いってしまうなぁとおもいくけけけけとなる。 そ…

ミステリマニア「耳をふさいで夜を走る」(石持浅海)

マニアは奥が深いんです。 例えば鉄道マニアだと電車見てはふーと言っているような状況をイメージするかもしれませんが、実態は多ジャンル。乗り鉄は乗るのが好き、撮り鉄は写真を撮るためのマニアであまり列車に乗らない、時刻表鉄はとにかく常日頃から時刻…

通勤電車あるある「昼のセント酒」(久住昌之)

降車駅近くで読み終わりそうだとホームでとりあえずラストまで読む。 あと50ページで家についた場合は翌朝もっていくと確実に読み終わってしまうので家で最後まで読む。 表紙は見られないように読書カバーをする。とくに講談社の場合は「あら、あの人あん…

貧乏です「藤澤清造短編集」(西村賢太編)

貧乏暇なし・・・的を射た言葉だな。いやほんと。根が貧乏症なんでどうもケチケチすることも多いです。 でもホントはそんなケチケチしなくても「大きなお金」を使うときにしっかり考えればいいだけなんだけどね。山田先生も言っているようにお金が溜まらない…

女性作家と男性作家「憧憬☆カトマンズ」(宮木あや子)

二分法は結構穿ったときもあるんだけど・・・ 男性作家は左脳で、女性作家は右脳な感じがしませんか? 例えばミステリでいうところの圧倒的なパズラーは男性作家が多い。女性作家と言われると海外ならクリスティがいるけど日本はちょっと思いつかない。現在…

ノンフィクションはドキドキするね「黒い看護婦」(森功)「子供を殺してくださいという親たち」(押川剛)「ケモノの城」(誉田哲也)

怖い物みたさっていう面で一番怖いのはノンフィクションだと思います。なにー、こんなこと実際にあるんだって思うとそれだけでもやもやもやもや。ああ僕はまだ「まし」な世の中にいるなぁと思ったりして。 ノンフィクションというと新潮文庫の独壇場。正直ど…

もじもじもじもじ「三四郎」夏目漱石

昨今の男子が草食系だとお嘆きの貴兄に送る。 夏目漱石『三四郎』 ああ、もじもじもじもじ。 そもそも発端からしてもじもじだ。三四郎は田舎から東京の大学に上京するのだが列車の関係で相席の女性(きっと小股の切れ上がったいい女だよ)と旅館で一晩を共に…

ミステリはろくでもないから面白い「キララ、探偵す」(竹本健治)「六とん4」(蘇部健一)「左90度黒の三角」(矢野竜王)

ミステリ読みの皆さんに質問。 ミステリってハズレ多くありません? 良くこんな文章で小説書くなとか 良くこんな最後までダルなラインで小説書くなとか 良くこんな陳腐な会話で小説書くなとか 良くこんな内容のないラストだけの本で小説書くなとか 良くこん…

これは笑ってしまった「カエルの楽園」百田尚樹

これは奇書だわ。 『カエルの楽園』百田尚樹 いや笑った笑った。いろんなとこでツッコミどこ満載なんだけど何がいいって百田がこれでもかこれでもかと私憤満載で書いているのがいい。現代の警鐘とか未来の予言とか右とか左とかどうでもいいんだけどまずこの…

役に立たないから面白い「檀蜜日記」(檀蜜)

なんの栄養もないような食べ物が好きだ。 寒天とか蕨餅。あるいは杏仁豆腐。野菜なら茄子のあのふよふよ感。コンニャクのあの主張のなさも好き。 ビタミンCがー、カロチンがー、アミノ酸がーと言っている横で小さくなりながら「僕らは何も栄養なんかないん…

題名が悪い?「女囮捜査官 聴覚」「女囮捜査官 味覚」(山田正紀)

名前で損をしているってありません? 大学だとやたら長い名前はFランの感じがするなぁ。 一番は東京農工大。なんか土の匂いが。国立なんだけど。あとは東京工業大もそんな感じがしてやまない。あとはどこだろ。京都工芸繊維大学。これも国立なんだよな。 芸…

ミステリマニア度チェック「女王国の城」(有栖川有栖)

・読者への挑戦があるとテンションが上がる ・好きな名探偵がいる ・ついつい本文で時間が書いてあるとメモしてしまう ・部屋の見取り図は欠かせないと思っている ・同様に人物紹介ページも欠かせないと思っている ・結論の直前では一回、本を閉じて自分でも…

これは奇書だわ「語り手の事情」(酒見賢一)

この本凄いんだけどあまりみなさん読んでくれないなぁって本は有りませんか。 いや凄いんだよとにかく惹きこまれるんだよもうくらくらするんだよそのままくけけけけけって成るんだよって感じなのに周りにはまず人気のない本。 ましてや作者を言っても誰それ…

とにかく考えてしまいます「犯罪」(フェルディナント・フォン・シーラッハ)

静かな物語です。 これは凄いなぁ。僕は熱狂的な物語も好きだが(物語の温度ってのはあると思う)、その一方で静かに語る物語も好きだ。 まず、全てが断片として語られそしてその断片のそれぞれに無駄がない。この物語には夾雑物がないからこそ純粋な結晶が…